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テリーのロンドン便り#2 | “難しい時間”のスパーズ戦

日本の皆さんが土曜夜の早い時間帯に試合を観ている時、会場の雰囲気に異変を感じたことはありませんか? いわゆる「ランチタイム・キックオフ」にあたるその時間帯の試合は現地時間12時30分開始で、準備や移動を考えると土曜日ながら朝早くに始動しなければなりません。それは選手にとっても同様で、ゆえに試合全体が寝ぼけた雰囲気になりがちです。

ただし、対戦相手が宿敵となればもちろん話は別。2月22日に行われたプレミアリーグ第27節のトッテナム戦は、ランチタイムながら今シーズン最も熱い試合の一つとなりました。

常連が集う地元のパブは朝9時頃からチャントで賑わい始め、そのままスタジアムに持ち込まれた彼らの熱気が寝ぼけムードに陥る間を与えませんでした。特に3か月ぶりの先発出場を果たしたオリヴィエ・ジルーにはメンバー発表の時から「Giroooud」の大声援が送られ、受けた本人も痛快なゴールと見事なホールドアップ・プレーによって期待に応えました。

あのピッチとスタンドの一体感はウィリー・カバジェロにとっても心強かったはずです。ケパ・アリサバラガとの入れ替わりにより最近特に注目されていますが、セーブを披露するたび、後ろを振り返って客席の方を見るたびにサポーターから盛大な後押しを受けました。

控えに回ったケパも腐ることなく一生懸命アップに臨み、スタンドのファンから声援が届くと手を振って反応。ケパらしい笑顔を見られて少し安心しました。ちなみに月曜日の練習に一番乗りで姿を現したのがケパだったということがSNSで話題になりましたが、この日最後にアップを切り上げたのも彼です。自らゴールマウスに立つだけでなく、若手のジェイミー・カミングのためにボール拾いや設置の手伝いまでしていた姿が印象的でした。

カバジェロの仕事をやりやすくした立役者として、ジョルジーニョにも触れなければなりません。彼の存在は相手からプレッシャーを受けた選手にとって本当に大きいです。

私のシーズンチケットの席が文字通りゴールの真裏にあるためGKに近い目線で試合を観ることができますが、ジョルジーニョは助けて欲しい時にいつも完璧なタイミングで中盤から下りてきます。自身へのパスコースを提供することはもちろん、下がってくる最中に回りの選手に適切な位置取りを指示して、「声によって」もう一つのパスコースまで作ってしまうから驚きです。こういった視野や声による貢献は数字に表れないため評価に繋がりにくいところですが、彼のおかげでチーム全体のパスが円滑化していることは確かな事実でしょう。

この試合はその他にも見所のオンパレードで、トッテナムファンから執拗にブーイングされながら矢のように突き刺さる左足砲で黙らせたマルコス・アロンソや、後にVARの見逃しが明らかになった危険スタンプを受けたにもかかわらず最後まで堅守を貫いたセサル・アスピリクエタなど、1本のコラムには書ききれないほど各々が光っていました。一方で、トッテナムの監督として初めてスタンフォードブリッジに戻ってきたジョゼ・モウリーニョに対するファンのリアクションが、驚くほどに「無」だったのは意外でした。

こういった気持ちの良い勝ち試合をランチタイムに観戦した時のメリットは、試合が終わるのも早いため、そのあとパブで余韻に浸れる時間が長くなることです。今回もビールを片手にハイライトを振り返りながら、長期離脱からようやくベンチに戻ってきたルベン・ロフタス=チークのチャントを歌って地元のファンと最高の土曜日を過ごしたのでした。

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