18年前の今日、眠れる獅子を目覚めさせたデニス・ワイズが退団した。その功績を称え、サポーターから愛されたその勇姿を振り返ろう。

チェルシーで初めてFA杯を掲げたキャプテンはロン・ハリス、そして最もFA杯優勝を果たしたキャプテンはジョン・テリーだが、その2人に挟まれてクラブ史に名を刻んだのがデニス・ワイズだ。

ワイズといえば、リヴァプールを下す番狂わせを演じたウィンブルドンのクレイジー・ギャングの一員。その数年後にスタンフォードブリッジへと本拠地を移すと、中位をさまようブルーズをカップ戦での栄光へと導いた。

1994年の決勝こそマンチェスター・ユナイテッド相手に完敗を喫したものの、キャプテンのワイズは諦めなかった。

プライドを引き裂かれるような敗戦から2年、準決勝でまたもユナイテッドに敗れてから数ヶ月後のこと、ワイズは契約延長にサインした。

6年を過ごしたクラブでキャプテンを務めたワイズにとって、タイトル獲得は大きな目標だった。

「何かを手にしたかった」と話すワイズ。「いいキャリアだったけど何も優勝できなかったなんて言われたくないからね。このタイトルを獲ったんだ、って言えるような写真を飾ってほしいよ。ピーター・オズグッドだってやっぱりタイトルと紐づけられて語られるしね」

程なくして、そんな目標が現実となる。1997年、FA杯決勝でキャプテンとしてチームを率いたワイズは、トロフィーをスタンフォードブリッジへと持ち帰ることに成功したのだった。

ウェンブリーで雌雄を決したのはミドルズブラ。ロベルト・ディ・マッテオが開始1分でネットを揺らすと、ワイズと苦楽を共にしたエディ・ニュートンがとどめを刺した。

「1994年の決勝に敗れて、今回は負けるわけにはいかなかった」と振り返るワイズ。「優勝できるって感覚はあった。もちろん実際にそうなるまで安心はできなかったけどね。満たされたよ。言葉じゃ表しきれないね」

「やっと、やっとこの瞬間がやってきた。待ちわびたよ、って感じだね。他のみんなにとってもそうだ。ファンにとっても、会長にとっても。みんなにとって大切な瞬間だった」

チェルシーフットボールクラブはこれを契機に、今に続く黄金時代へと突入する。今でこそプレミアリーグ優勝争いの常連にまでなったが、当時はFA杯に加えカップウィナーズカップ、リーグ杯と12ヶ月の間に次々へとタイトルを手にしたのだった。

そして2000年には2度目のFA杯優勝を達成。旧ウェンブリーで行われた最後の優勝クラブとなった。ワイズはこの試合でマンオブザマッチの活躍を披露。チェルシーでのキャリアを申し分ないものへと昇華したのだった。

クラブ史に間違いなく名を刻んだデニス・ワイズ。ミッドフィルダーとしてはフランク・ランパードが現れるまでクラブの最多得点記録を保持していた。サンシーロでのゴールは今でも語り草だ。

キャプテンとしてファンとの絆は特別なものだった。そのリーダーシップは、のちのジョン・テリーに大きな影響を与えている。

ファンが待ち望んだその瞬間、1997年のFA杯優勝。ワイズがそのトロフィーを掲げた1枚は、これからもずっと残り続ける。