試合会場で直に試合を詳細にわたって分析することができたチェルシーのレジェンド、パット・ネヴィンが、ブルーズがマンチェスター・シティを破ってヨーロッパ最高のトロフィーを獲得したこの日の最も特筆すべきことについて語った。

わたしはそれが100%確実に起こったことと今でも確信できないでいる。そして何度もチェックし、実際にチェルシーがヨーロッパの王者になったことを理解する。さらに重要なのは、チェルシーが王者に相応しいプレーを見せたことだ。このような文章を書くこと自体、数か月前には考えられなかったことだろう。サッカーについて「熟知」している人たちは皆、そのような発言をする者の精神状態を疑っただろうし、考えの偏った愚か者と見なしただろう。

チェルシーの多くの分野における改善は驚くべきものだったが、もともと非常に優れたチームが更に成長したということは、さらに強い印象を与えるだろう。ビッグイヤーを再び勝ち取ったことがクラブにとって歴史的な瞬間であることは言うまでもないが、それに至るまでには信じられないような瞬間がたくさんあり、そして2021年5月29日の決勝戦でそれは最高潮に達した。

人生の中で、このような日がどれだけあるだろうか?20年後、30年後、40年後に、どこで何を見ていたか、どんな気持ちだったかを正確に覚えているほど脳裏にはっきりと焼き付いている日は、意外と少ないだろう。

ペップを圧倒したトーマス

もちろん、ポルトに行くことができたのは非常にラッキーだった。事前の予想では、確かにチェルシーは不利と言われていたが、チャンスが全くないという知人は誰もいなかった。ラジオやテレビのインタビューでブルーズが不利と言われることは、私にとっては悪い事ではなかった。なぜなら、そういった下馬評はブルーズからプレッシャーを取り除き、ペップやシティの選手たちにとって重圧となるからだ。

ペップは冷静を装っていたが、私や多くの人は彼がプレッシャーのために戦術を凝り過ぎてしまうのではないかと思っていた。その答えは、チームが発表されたときに出た。その時点でチェルシーは劣勢ではないと確信したのだ。彼はチェルシーに対抗するために布陣を変更したが、対照的にトーマス・トゥヘルは何よりもまず自分たちの長所が活かせるようにスタメンを選んだ。相手について心配することは、彼の優先順位では高くなかったのだ。

トゥヘルにとってこの決断には勇気だけでなく、選手たちと戦術プランを信じることが必要だったろう。今シーズンはほとんどの試合で、最初から最後までプランが機能していた。誰もがカギとなった瞬間を選ぶことができるだろうし、全員が正しいのだろうが、私には自分の考えがある。

前線から守備陣に至るまでの貢献

カイのゴールはもちろん重要な局面だった。それは彼が今後数年のうちに地球上で最も重要な選手の一人になる可能性があることを、世界に向けて表明した瞬間だった。エンゴロは誰にもできないプレーを何度も見せてくれた。しかし、彼は毎週のようにそれを繰り返してもいた。

カンテは今だけでなく、どの時代のどのチームでも最初に選ばれる選手であることを証明するほど決定的なマン・オブ・ザ・マッチだった。彼は偉大な選手であり、多くの人がバロンドールを受賞するにふさわしいと言っているし、私も心からそう思う。

しかし、ピンチを救ったトニ・リュディガーのタックルはどうだったか?あのプレーも決定的だったし、ジョン・テリーを彷彿させた。しかしスタジアムにいたサポーターは、試合終了のホイッスルが鳴ったときに、彼らの元に100メートル走ってきたことにも言及するだろうし、ブルーズの観客のところまでピッチの長さ100メートルの疾走をしたことが、それと同じくらい見事だったと言うだろうし、愉快な行動だった。今の彼は、クラブにとって正真正銘のカルト的存在である。

タップインを狙うギュンドアンより前に左足でバーの上にクリアしたアスピのプレーも、チームをピンチから救い延長戦突入を回避させた。このスキッパーほど称賛に値する選手はいないだろう。

アンドレアスも同様に見事なブロックを見せたが、最後までラヒーム・スターリングとのデュエルに勝ち続けたリース・ジェイムズが守備の見せ場を奪った。彼はマン・オブ・ザ・マッチのエンゴロに限りなく近い傑出したプレーを見せた。

ティモ・ヴェルナー、ジョルジーニョ、メイソン・マウントの疲れを知らない走りっぷりは、解説席から見ているだけで疲れてしまうほどだった。前半終了間際、ケヴィン・デ・ブラウネがついにゴール前でフリーになったときに、メイソンがディフェンスラインまでついて行ったシーンがあったが、これについては来シーズンにもっと掘り下げた分析記事を書くつもりだ。

正直なところ、カイル・ウォーカーが好調時、彼に追いつける選手は英国にはいないと思っていたが、ベン・チルウェルはドラガオで何度もそれが間違っていることを証明してくれた。他のディフェンス陣と同様、相手のクロスをよく防いでいた。また、チアゴ・シルバが負傷退場する前に見せた冷静で効果的なプレーは、チーム全体に自信を与える礎となった。

そして勝者は…

事前にファンゾーンでブルーズのファンが私の名前を含め歌い始めたとき、私は言葉にできない喜びを心の底から感じた。少し息が詰まるようだった。そのファンたちが後にスタジアムで果たした役割は、私の心の中に永遠に残るだろう。

残り数分、選手たちは疲労困憊しており、何らかの助けを求めていた。トーマス・トゥヘルはタッチライン際に立っていたが、選手たちに必要なのは監督の掛け声だけではなかった。彼はサポーターに向かって、自分とチームを助けてくれるよう懇願し、その反応は驚くべきものだった。

マンチェスター・シティのサポーターの方が多かったかもしれないが、90分が終わるまで、そしてその後のアディショナルタイム7分間ずっと、サポーターはチェルシーのために大声で叫び、心を込めて歌ってくれた。それは、チェルシーの選手たちを目に見えて元気づけ、さらにはマンチェスター・シティの選手たちを目に見えて萎縮させた。その場に居合わせなかったサポーターもそうであったように、彼らは最後まで素晴らしい支えとなってくれたのだ。私にとってはそれがスタジアムで最も印象深いシーンだった。

それは、監督とサポーターとの間に完璧な絆が生まれた瞬間だった。トゥヘルはおそらくサポーターからそれほどのサポートを受けることを予期していなかっただろう。しかし、チャンピオンズリーグの夜にチェルシーのサポーターで溢れかえるブリッジを見れば、彼はチェルシーの本当の姿を知ることになるだろう。彼はまずその騒々しさに、次にその効果に驚かされるだろう。

たくさんの特別な思い出ができた夜だった。そして、このチームがさらに強くなり、これからもっと忘れられない瞬間をつくってくれるだろう、と信じさせてくれる夜だった。