チェルシーはカラバオカップ決勝でPK戦の末に敗れたが、データを見ると120分のスリリングなサッカーの末、結果はどちらに傾いてもおかしくなかったというトーマス・トゥヘルの主張が間違っていないことがわかってくる。
トロフィーがかかったウェンブリーでのカップ戦は、両チームともリスクを冒したくないため時として試合が膠着することがあるが、この日のチェルシーとリヴァプールにはそのような姿勢は見られなかった。
試合は非常に見せ場も多く、両チームともそのパフォーマンスを高く評価されるに値するプレーを見せた。そして一番の驚きは、試合がスコアレスのままPK戦にまでもつれ込んだことだろう。
無得点という不可思議
ゴール期待値のデータは、試合が無得点に終わったことがいかに意外であったかを強調しており、2-2の引き分けがより正しい結果だと言えただろうが、リヴァプールがチャンスでわずかにリードした。
両チームともネットを揺らすことはなかったものの、試合中に合計31本のシュートがあった。そのうち20本がレッズのものであったが、両チームのシュート数の分布を見ると、より複雑な物語が浮かび上がってくる。リヴァプールのシュート20本のうち11本はオープンプレーから、残りはセットプレーから生まれた。一方のチェルシーは11本すべてがオープンプレーからだった。
エリア内からのシュートはリヴァプールが81%、チェルシーが82%と、両チームとも我慢強くチャンスを待っていたことがわかる。
もちろんこの統計は、両チームが実際にゴールを決めたにもかかわらず、主審のスチュアート・アトウェルとVARの組み合わせによってオフサイドの判定を受け、チェルシーが3回以上その苦痛を受けたという事実によって若干歪んだものとなっている。カイ・ハフェルツがGKケレハーを2度破ったが、公式記録ではシュートゼロとされているのも、そのためだ。
このように120分の間に両チームともチャンスを生かせなかったからこそ、試合がPK戦にもつれ込むと、まったく逆の展開になったことに驚かされる。最初の21本のスポットキックは、ケパ・アリサバラガが不運にもシュートを外してしまうまで、すべてゴールとなった。
この試合では、リヴァプールがGKを含む11人全員がPKを成功させたため、チェルシーのトップチームが参加した試合では、今シーズン初めのUEFAスーパーカップのビリャレアル戦、2008年のチャンピオンズリーグ決勝のマンチェスター・ユナイテッド戦(7人で決着)を上回る記録となった。
踏ん張り
両チームがチャンスを生かせずに終わったのは、攻撃の詰めの甘さと同じくらい守備の堅さが原因だっただろう。特にチェルシーに関してはこの指摘が当てはまる。
リヴァプールの20本のシュート中枠内へは6本しかなかったが、10本がブルーのディフェンダーにブロックされた。(トレヴォ・チャロバーが3本ブロック)
また、リヴァプールが作ったチャンスに対して、ディフェンス陣がすべての局面で対抗した。チアゴ・シウバの12回のクリアはリヴァプールのどの選手よりも2倍で、アントニオ・リュディガー(9回)とマルコス・アロンソ(7回)も相手チームの誰よりも多かった。
リヴァプールのルーズなパスには、中盤とディフェンスがたゆまぬ努力を続けた。特に、チャロバーは7回、エンゴロ・カンテは5回インターセプトをした。ピッチ上で3回以上記録した選手は他にいない。
リヴァプールに執拗にプレッシャーをかけ、特にファイナルサードでミスを誘ったことは、ディアス、モハメド・サラー、サディオ・マネの先発フロント3人が15回ボールを失ったのに対し、我がチームのカイ・ハフェルツ、クリスチャン・プリシッチ、メイソン・マウントがわずか9回だったことからも明らかである。
空いた隙を求めて
リヴァプールの攻撃的な右サイドバック、トレント・アレクサンダー=アーノルドの背後にある左サイドを、カラバオカップ決勝で危険な攻撃を仕掛けるためのスペースとしてチェルシーが狙っていたことは、試合を通して明らかだった。
ハフェルツはしばしば左側に流れて左サイドのマウントに近づき、アロンソとマテオ・コヴァチッチは反対側のカンテとセサル・アスピリクエタよりも明らかに高い位置からプッシュしていた。
アロンソが4本、マウントが3本のクロスを供給したのに対し、右サイドのアスピリクエタとプリシッチがそれぞれ1本ずつだったのも、そのためだろう。
しかし、ハフェルツの動きによってスペースを作り出し、リヴァプールのセンターバックを惹きつける能力の重要性は、いくら強調してもし過ぎることはないだろう。また、チェルシーの選手で唯一、キーパスを5本記録している。
また、フィルジル・ファン・ダイク相手に1トップとしてのプレーも悪くなかった。チェルシーでハフェルツの空中戦4回を上回ったのはチアゴ・シウバ(6回)だけであった。