今年最後の代表選によるブレークにより、2020/21シーズンのこれまでのチェルシーについて落ち着いて分析することができる。ここでは開幕から今までのデータやその他の傾向を検証する。

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開幕から3試合で勝ち点4しか取れなかったのに比べ、最近は好調を維持しており、ここ5試合で11ポイントとトッテナムとサウサンプトンの13ポイントに次ぐ記録である。

チャンピオンズリーグでも順調で、3試合を消化しセビーリャと同ポイントで首位となっている。第4節のレンヌ戦で勝利し、セビーリャがホームでクラスノダールに勝つとグループステージ突破が早々と決まる。

息の合った攻撃陣

コンディション、パフォーマンス、そして結果が順調であるのは、攻撃陣の連携がうまくいっているからだろう。ブルーズは現在得点数20でリーグトップ、ここ数試合は右サイドのハキム・ツィエク、左サイドのティモ・ヴェルナー、そしてくさびとなる中央のタミー・エイブラハムがコンスタントにチャンスを創り出している。

下の表からも攻撃陣の好調ぶりが見て取れる。

xG(得点機会)が高い理由の一つに、ゴール前での落ち着きが挙げられ、ゴール/シュート数もリーグトップとなっている。

ベン・チルウェルのバランス能力やハキム・ツィエクの左足からのパスなど、ここ数試合新規加入選手の活躍が目立っている。彼ら2人でリーグ8ゴール(3得点5アシスト)を演出しており、この数字を上回るのは出場機会が多く、ここまで5得点に絡んだヴェルナーだけである。

ここ数試合のチームにおけるエイブラハムのパフォーマンスもチームの好調に大きく関与しており、ランパードはつなぎとなるプレーと守備陣との距離を縮めるくさびとしての役割など、彼のオールラウンドぶりを高く評価している。エイブラハムはここ2試合で2得点を挙げており、90分間のゴール・アシストもチーム上位となっている。

チームとしての強さ

この複雑なシーズンの中、これからの数週間・数か月、チームとしての強さが重要になるとランパード自身が語っている。ランパードは今季リーグ戦で既に24人を起用しており、この数字はエヴァートンの25人に次いでリーグ2位となっており、2019/20シーズン全体に比べても3人差しかない。

リーグ戦4分の1を消化して、エンゴロ・カンテとヴェルナーだけが全8試合に出場と、ランパードがターンオーバーを重視していることがわかる。

夏季補強選手の本領

プレシーズンの膝の怪我によりチーム合流が遅れたツィエクだが、復帰後はパス、クロス、シュート、そしてアシストと周囲を納得させる輝きを見せている。

27歳のツィエクはここまで3アシスト2得点を記録しており、リーグでまだ191分しかプレーしていないにもかかわらず、13回チャンスをつくっている。現在の段階でリーグ戦では48分毎にゴールまたはアシストを記録している。

しかし、新規加入選手で活躍しているのはツィエクだけではない。この夏に加入した全6選手がすぐにチームに順応し、大きな影響を与えている。エドゥアール・メンディは360分間で1失点のみ、一方チアゴ・シウバは持ち前の個性、戦術眼、冷静さで守備を安定させた。

ヴェルナーは12試合で8得点、チルウェルは運動量の多い左SBとして高評価を受けており、カイ・ハフェルツは前線で自由に動き回り多くのチャンスを演出している。

若手の台頭

昨季、若手だけでは何も達成できないと周囲に批判されながらも、ランパードは自分の考えを曲げず、若くハングリー精神を持ったチームを構築した。

ブルーズは今季21歳以下の選手を1791分起用、これはリーグトップの数字である。

これはただ若手選手の活躍を示しているだけではない。リーグで最も多く起用された11人のうち5人(チルウェル、エイブラハム、ハフェルツ、マウント、ジェイムズ)は23歳以下で、チームの平均年齢でチェルシーを下回っているのはウェストブロムとアストンヴィラのみである。

しかし、36歳のチアゴ・シウバを守備の要として獲得したことにより、昨シーズンの24.63より平均年齢は若干上がっている。

異なるアプローチ

ブルーズを近くから見ている人は、今季のポゼッションが昨季のものと少し異なることがわかるだろう。ランパードは昨季、素早くサイドチェンジができず、ブリッジで守りを固める相手を崩すことができないことに不満をあらわにした。

サウサンプトン、ボーンマス、ウェストハム、シェフィールド・ユナイテッド、そしてレスターとの試合で勝ち点を落としたことは、記憶に新しいだろう。今季はパス数も増加し、マンCとリヴァプールに次ぎリーグ3位となっており、パスの種類も変わってきていることがわかる。

チェルシーは今季1試合あたり21.3回サイドチェンジをしており、この数字はプレミアリーグでトップとなっている。チルウェルは左サイドでバランスを取り、マウントは昨季よりも低い位置でより自由にボールを回しており、ディフェンスラインから飛び出るチアゴ・シウバも同様の役割を果たしている。

これはホームのスタンフォードブリッジにおいて、サイドを変え、相手のコンパクトな守備を崩せていることを意味している。サイドバックが頻繁にオーバーラップし、ウィングが中央に入り込むことにより、相手の中盤と守備のラインにスペースが生じるのである。

ポゼッションは昨季より数値は低いが、その中身は大きく異なり、過密スケジュールとなる今後数週間も良いパフォーマンスをが期待できる。