トーマス・トゥヘル率いるブルーズのマンチェスター・シティとの2試合を振り返りながら、今夜のチャンピオンズリーグ決勝で重要となる戦術的なポイントを分析してみよう。

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ブルーズはヨーロッパ最強と謳われるチームをどのように攻略できるか?

高いディフェンスライン

ペップ・グアルディオラは高い守備ラインを好み、その弱点を突いたブルーズはここ2試合で連勝した。

FAカップ準決勝ではティモ・ヴェルナーが2度持ち前のスピードで抜け出し、ハキム・ツィエクのゴールを演出した。最初の得点は取り消しとなったが、2点目が勝負を決める決勝点となった。

今月序盤のエディハドでの対戦でもシティは高い守備ラインで、前半ヴェルナーがその裏を抜け出しGKエデルソンより先にボールに届いたがシュートは横に外れた。後半にはリース・ジェイムズ、ハキムツィエク、クリスチャン・プリシッチ、そして途中交代したカラム・ハドソン=オドイがスピードとエネルギッシュなプレーで試合の流れを変え、ヴェルナーがスペースに入り込みあげたクロスをマルコス・アロンソが決めた。

スペースの利用

ヴェルナーがサイドバックとセンターバックの間を突くことを好むため、メイソン・マウントはサイドの開いた位置でプレーすれば、その恩恵を受けられるだろう。

これまでチャンピオンズリーグでは、タッチラインから離れてライン間のスペースに入り込むことを楽しんでいた。もし、マウントとヴェルナーがカイル・ウォーカーやルーベン・ディアスを引き留められれば、他の選手、おそらくジイェックやプリシッチも恩恵を受けることができるだろう。

カギとなるポゼッション

どちらのチームもボールを欲しがるだろうが、ウェンブリーでの試合で印象的だったのは、チェルシーが序盤からボールをキープし、勝利への流れを作ったことだ。

序盤の30分でポゼッションは約60%、後半も同じような展開で、最初の15分間は67%となった。そしてヴェルナーからのアシストをツィエクが決めたのもこの時間帯だった。

シティはポゼッションのため、そして高い位置でボールを奪うためにチェルシーのダブルピボットにプレッシャーをかけてくるだろう。これは彼らのトレードマークでもあるが、チェルシーとのここ2試合の対戦ではいつものように効果的にはできていない。

どちらの試合でもターンオーバー数はブルーズのほうが多かった。

シティのオーバーラップ

最近ではベンジャミン・メンディが左サイドバックを務めていたが、決勝はオレクサンドル・ジンチェンコが起用される予定で、その対策が必要となるだろう。

ジンチェンコの左サイドからのオーバーラップは、これまでのチャンピオンズリーグでシティの大きな武器となった。その動きはピッチの高い位置での脅威となるだけでなく、フィル・フォーデンが自由に動けるスペースを作り出す。

イングランドの若きスター、マウントのように、フォーデンのチャンピオンズリーグ決勝トーナメントでの活躍は目を見張るものがあり、シティを止めるためには彼がスピードに乗ってボールを運ぶのを阻止しなくてはならないだろう。

この点を考慮して、トゥヘル監督は右ウィングバックと3バックの右サイドに誰を起用するかを慎重に検討するに違いない。最近の3試合では、リース・ジェイムズとセサル・アスピリクエタがポジションを変えているが、アンドレアス・クリステンセンが復帰したことで、トゥヘル監督は右サイドにもうひとつの選択肢を得たことになる。

チェルシーのウィングバックは相手フルバックの攻撃参加を抑え、グアルディオラ監督が採用している流動的な4-2-3-1と4-3-3の布陣で攻めてくる中盤を強化させるだろう。

いずれにしても、世界最高峰の監督2人による魅力的な戦術のぶつかり合いになることは間違いないだろう。